４月２４日の日記。

週初めの今日はあまり良い一日ではありませんでした。

朝、駅について新聞を買おうとカバンを見ると、どうやら財布を忘れてきたようです。
定期券は胸ポケットに入れて出てきたので（学習機能ゼロ）、
難なく会社に辿りつくことだけは出来ました。

で、上司から３０００えん程借りて１時間もしないうちに訃報の回覧が。
自分の時はいくら出してもらったんだっけ、などと考えても家のパソコンを見ないと
わからんのでとりあえず全額香典へ。
昼メシは机の中に散らばっている金をかき集めて何とかなりましたが、
今日は新聞も読んでなければ、帰りにオアシスであるいなげやにも寄れませんでした。

帰りは帰りでいきなりどしゃ降りの雨です。
運良く折り畳みの傘を持っておりまして、バス停に並んで待っていると、
私から三人前に並んでいる女は傘もささずに濡れているじゃありませんか。

過去に何度かあったシチュエーションです。
自分の前に並んでいるならともかく、三人前の女に声をかけるのは躊躇していまいます。
ううむ、私にあと少しの勇気があれば・・・


「お嬢さんそれじゃカゼを引きますよ。良かったら僕の傘を使いなさい」
「（くるりと振り向き）あ　いいんです。大丈夫です。もうすぐバス来ますから」
「なあに僕は太ってるから少しぐらい濡れた方がいいんですよ」
「フフフじゃあせっかくだから一緒に入りましょう」


バスは到着し、自然と二人は隣に座る。
その日起きた出来事などを話しているうちに、あっという間に時間は過ぎていく。
二人はさっき出合ったとは思えないほど会話がはずんでいるようだ。
いかん。私は次の停留所で降りなくては。


「ではお嬢さん私はこれで」
「えっそんな・・・ぜひ今度今日のお礼をさせてください」
「いやいや傘ぐらいのことで何をおっさる」
「わ、わたし・・・もう一度会いたいんです。今日はとても楽しかったんです」


電話番号を交換し、それぞれの家路につく二人。
これが出会いというものなのか。


女は－

家に帰り、テレビを見ながら飲んだくれている旦那を横目に見つつ、
左手薬指の指輪を外す。

「もしかすると、あたしあの人のこと好きになっちゃったかも・・・」


男は－

誰もいない家に帰り、土曜朝の豪華カニチャーハンを思い起こしつつ、
醤油をかけたラタトゥイユをぼそぼそと食べながら、
ありもしない妄想をずっと続けているのであった。



「完」